

図3.14 ロンジウェブのき裂伝播寿命解析結果
3.2.3 損傷事例の解析例
従来、疲労寿命の評価あるいは疲労損傷の解析には線形被害則であるマイナー則が用いられてきた。簡便ではあるが、その推定精度に関しては満足できないことも明らかである。特に、船体で普通発見される大きさのき裂の損傷解析にマイナー則を用いることは本来正しくなく、き裂伝播解析を行うべきであることは自明であっても、これまではできなかった。しかし、本研究部会の成果で上記のように船体構造部材中のき裂伝播挙動を解析できるようになった。
(1)バルクキャリアー、二重底ホッパー部(図3.15参照)の溶接部に発生したき裂に対し、内底板、ビルジホッパー斜板板厚貫通までは表面き裂伝播解析、その後貫通き裂の伝播解析を行い実損傷例と比較する。
荷重条件はHcavy Ballast及びFull Loadの両状態で実際の積付け条件にしたがってバラストタンクの内圧、Crcst Wave,Through Waveによる外圧をそれぞれ考え、各々の場合の差を変動荷重とし、また変動縦曲げモーメントよる付加変動応力も考慮した。応力解析の結果を基に、内底板及びビルジホッパー斜板に初めにき裂が発生するとした。その結果、
(i)表面き裂伝播解析により、内底板を貫通する表面き裂は約2.8年で85mmになった。損傷は1年でき裂長さが100mmであり、解析結果は実損傷例と比べ遅くなっている。
(ii)内底板及びビルジホッパー斜板をき裂が貫通した後の貫通き裂は進展するにつれて速度が遅くなる。
(iii)特に、内底板上のき裂はサイドガーダーに達する前に停留する傾向があり、実際に発見されたき裂と似た挙動を示す。
(2)シングルハルVLCCの船側力一ゴオイルタンク内のサイドロンジと横隔壁壁付きホリゾンタルスフチナ(図3.16参照)の交差部角まわし溶接止端部から発生したき裂に対し、ホリゾンタルスチフナフェイスプレート貫通時までを表面き裂伝播解析、その後ウエブ材では貫通き裂の伝播解析を行い実損傷例と比較する。
荷重条件はFull Loadが支配的なためBallast Loadは無視した。縦曲げ、水平曲げ及び外圧は船体運動により求められた波浪変動成分で、内圧は静圧とした。その結果、
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